2017年12月13日

【ぶらり父子の旅】

 いつもの夏休みならば、庄内は湯野浜での海水浴が、我が家の定番行事となるのだが、毎年、小生の本業都合でお盆までお預けとなる始末である。今夏は、8月の声が聞こえたかと思えば、我が家の死活問題とも成り得る雨の日が続いたのだった。そのような天候の為、海水浴へとの気分でもないし、はてさて如何したものか。そうだ乗り方でもしようかなと愚息に相談したのである。海に行きたいはずの愚息ではあるのだが、どうやら乗りたい路線があったらしく、話は進み、予てより乗りたかった「阿武隈急行線(阿武急線)」と、再訪したい「福島交通飯坂線(いい電)」そして、あわよくば新型車両の乗車を、男二人での旅を楽しむ事になったのだ。

  8月15日の朝。やはりなのか雲行きが怪しく、先行きが心配ではあるものの、「小さな旅ホリデー・パス」を手にして、山形駅から仙山線列車の車中の人となる父子。近頃、やたらと幅を利かせた様に運用に着いているE721系1000番台電車に揺られ仙台へ。面白山トンネルを抜けた辺りから次第に雨脚が強くなり始め、車窓を楽しむ気分になれそうもないでいたら、途中の列車交換駅にて、701系電車を見つけては、つい目を奪われてしまったのである。
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   阿武隈急行8100型。
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   重宝した「飯坂温泉日帰りきっぷ」。

 仙台駅からは阿武急線との接続駅である東北本線槻木駅へ。阿武急線といい電を通し利用出来るフリー切符(しかも飯坂温泉の入浴券付き)「飯坂温泉日帰りきっぷ」がある事を調べて出かけたのであるが、販売カ所が限定されているらしく、事もあろうに槻木駅での購入は不可。しかも、列車内では購入出来ないとも。それって、仙台側からの利用を想定していないのか、利用者が皆無だったのか。購入出来る有人駅以外で降りたならば、正規料金での乗り降りを繰り返さなければならず、かなりの負担を強いられるのだろう。阿武急線本社に問い合わせしたところ、途中の有人駅か終点の福島駅で精算時に、フリー切符を購入しても構わないとの回答があり、今回は、とりあえず『乗る!』が目的の阿武急線なので、車両基地のある梁川駅(有人駅)で途中下車するつもりでいたので、槻木駅から、乗車券を購入せずに、昭和の香りが漂う阿武隈急行8100型に乗り込んだのである。どこか国鉄型車両の面影がある車内に懐かしさを覚えた小生と、古い車両に興味津々の愚息は、出発までの時間を、観察と記録に明け暮れたのだ。
  槻木駅から分かれた阿武急線は、東北本線のバイパス路線として福島―槻木間に計画されて着工されたものの、槻木駅から丸森駅までの開業に留まり、やがて国鉄の赤字ローカル線として廃止対象路線となってしまう。その未着工区間の建設と営業を引き継いで第三セクター鉄道「阿武隈急行」が、昭和59(1984)年に誕生したのである。昭和61(1986)年7月1日に、国鉄からの転換により、槻木―丸森間を非電化で暫定開業し、譲り受けたキハ22型で運転されたのである。昭和63(1988)年7月1日 に、丸森−福島間を延伸開業し全通、全線を交流電化とした。
 さて、同線は全線単線のまま、山間へと。時折、阿武隈川と寄り添いながら、進み行くのだが、朝からの雨もあり、窓の開く列車なのに開けられず、川面は増して濁り、せっかくの車窓の風景が半減されてしまったのかもしれない。しかし、そこは、初めての路線と風景でもあり、それなりの発見と揺れを楽しみながら、梁川駅へと着いたのである。精算は、フリー切符で済まし、改札の外へ。ホームから福島寄りに車両基地を見つけていたので、次の列車までの時間まで散歩に出掛けた。変わった塗色の車両を見つけては、いぶしがる父子(予備知識が無さ過ぎるのかも)でもあった。また、駅前の伊達市役所梁川支所の敷地内に、原発からの放射能で汚染された土壌が置かれていたのに気づかされ、もちろん、放射能レベルは安全な物になっているのだが、まだまだ、あの震災からの復興は道半ばである事に、あらためて心を痛めたのである。
 再び、阿武急線に乗車をと。ホームに留まっていたのは、当駅始発となる列車で、しかも、さっき見つけた変わった塗色の車両なのだ。派手というべきか、何かのキャラクターが描かれているではないか。それは、福島と宮城をつなぐ同線が戦国時代の人気武将「伊達政宗」ゆかりの地である伊達市を舞台にしたアニメ番組とタッグを組んで、同線をもっと楽しむプロジェクトをスタートさせ、「伊達なトレインプロジェクト」と銘打って、阿武隈急行沿線の魅力を発信していくとの事である。どんなアニメ番組なのだろうと考えながら、そうかココから伊達家が始まったのかと、古に思いを馳せながら、流れ行く車窓を眺めたのである。
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    伊達なトレインプロジェクト色。
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      阿武隈川に寄り添い。

  そうこうしているうちに、東北新幹線と東北本線を交差し、果樹畑や市街地が見えて来て福島駅に到着。昼時に、久々の賑わいのある街に着いた父子は、「いい電」に乗る前に「まずはご飯。」とばかり店を探すものの、当然の様に混んでいる訳で、ホリデー・パスを入場券代わりに福島駅改札内へ。店は少ないものの、麺類に洋食にと店を選べられたのには、一安心。お腹が落ち着いたところで、いよいよ「いい電」を楽しむのである。1月の宿泊例会以来になる同線。季節が違えば沿線の趣も違うもので、緑豊かな沿線風景が車窓を楽しませてくれている。沿線の街並みや空気感を感じて、途中下車と駅間の散策を繰り返し、撮影場所を探し歩けば新しい発見も出来た。いい電の今を、それぞれのカメラに収めて終点の飯坂温泉駅へと。気が付けば雨が止んでいる空の下を、気ままな足どりで辿り着いたのである。
 辿り着いた安堵感からなのか、はたまた達成感からなのか、程よい疲れが出てしまったので、早速、旅の目的の一つでもあった温泉への入浴を目指す。日帰りきっぷでの入浴は、提携施設の中から一カ所を選んで利用出来るとの事だった。宿泊例会でお世話になった「福住旅館」も利用出来そうで、律儀にも愚息が「また入りたい。」と言うものだから、同旅館へ向かったのである。大浴場には、時間帯がそうなのか、誰一人も居ず貸切状態。しばし、旅の疲れを流しては、ゆっくり湯に癒されたのである。
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     医王寺前−花水坂間。
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     飯坂温泉駅にて。

  さぁ、後は帰り道となるのだが、福島駅からの「つばさ」号の出発時間まで、まだ早いし、新幹線の撮影を楽しんでも良かったのだが、肝心な新型車両1000系電車の動いている姿をまだ見ていない。これから桜水駅を始発とする夕方からの運用に着く車両があるはずだが、もしかしたなら。飯坂温泉駅から福島駅に直行せず、本日二度目の桜水駅で途中下車。車両基地では、出発準備を行っている同車両を確認し、春の運転開始から、乗りたいと思っていたものだから、変に気分が高揚してしまった父と子。同駅から一度、飯坂温泉駅へ行き、そこから福島駅に向かうらしく、駅の外から走っている姿をまずは見たい(撮影したい)父だが、乗り心地を堪能したいと言う愚息の気持ちを汲んで、ホームに入る同車を待って、期待に胸を躍らせながら乗り込んだのである。
 25年ぶりの新形式車両は、これまでの飯坂線の歴史と、お客様や沿線の皆様への感謝、そして未来へのメッセージを込めたデザインで、沿線の皆さんの生活の中で、より親しまれる事を願っているそうだ。そうであってほしいものである。
  その車両は、とても優しく楽しい電車となり、難しい機械的な事は置いといて(これが大事なのかもしれないが)、車内には、広い車いすスペースや停車駅の案内をする液晶車内表示器が設置されていた。車内放送は二カ国語対応となり、英語での案内も加わり、国内外からの多くの利用客が飯坂温泉または福島市内を楽しんで旅が出来る事と思う。また車両の前後には「飯坂温泉」「ゆ」の暖簾(のれん)が掛かり、窓には、飯坂温泉の四季をイメージした福島市のキャラクター「ももりん」のイラストラッピングが施されている。四季のイラストには、それぞれどこかに「ブラックももりん」が隠れているので、探してみるのも面白いかもしれない。
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     GOOD TRAIN いい電。
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     1000系出区。
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     車内表示器と暖簾。
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     明るく温もりが溢れて。

  たっぷり「いい電」を楽しみ、再び福島駅に到着。新幹線ホームに上る前に夕食としたく、とある友人お勧めの新幹線改札内にある「駅そば屋」へ寄ってみる。当駅では、乗り継ぎでもしない限り寄る事もなく、昨今、めっきり少なくなった立ち食いそば屋さんだもの、懐かしさと旅の醍醐味を味わった気分になった。美味しかった。
  新幹線ホームに上がれば、行き交う新幹線にトキメキ、乗っていれば絶対に見る事の出来ない「やまびこ」号と「つばさ」号の併結作業まで見る事が出来たのである。
  やがて、旅の最後となる「つばさ」号が入線して来た。程なくして山形へ戻るために乗り込み、静かに福島駅を後にした。すっかり暗くなった車窓を眺める愚息も楽しかった様で、同じ趣味をいつまでも楽しんで行けたならばと、缶ビールを飲みながらしみじみ思う父である。父子を乗せた「つばさ」号は、いつしか夜の山形駅に着いたのであった。
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     新幹線改札内のそば屋さん。
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     福島駅に停車中のE5系。
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     ここでしか見られない光景。
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     無事に山形到着。

    鉄道友の会山形支部・支部報 気動車急行「出羽」平成29年秋号 より
  

   

posted by 管理人:錯乱坊 at 12:27| Comment(0) | 鉄道徒然草
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